日本の暗号通貨業界に対する規制が強くなり、
「交換業ライセンスを持っていないと、実験をすることもできなくなってしまう・・・」
というような話を耳にすることが増えてきました。
この件なんですが、「レギュラトリー・サンドボックス」という制度(以下、サンドボックス)を活用することで、回避できるのではないでしょうか?
以下、制度の概要と利用実例を簡単にまとめてみました。
レギュラトリー・サンドボックス制度とは
一言でいえば、現行法の適用を一時的に緩和する制度のことです。
サンドボックスの嚆矢は、2014年のイギリス。
フィンテックサービスの事業化をスムーズにするために導入されました。
その後、アメリカ、シンガポール、香港、オーストラリアなどでも実施されています。
フィンテックやドローンなど、最先端のイノベーションを事業化する過程では、実証実験が必要となるケースがあります。
しかし、実証実験を行おうにも、規制に触れる懸念があると事業者としては二の足を踏んでしまいますよね。
事業者「革新的な事業のために実証実験をやりたいんだけど、法に触れるのが心配・・・」
当局「じゃあ、実証実験をやる間はちょっと大目に見てあげるね」
サンドボックス制度を利用することで、
事業者は安心して実証実験をおこなうことができ、当局としてはイノベーションの芽を摘まずに済む、というわけです。
なお、制度の利用にあたっては、
内閣官房の新技術等社会実装推進チームへ申請をおこない、認定を受ける必要があります。
「レギュラトリー・サンドボックス」
革新的な事業の創出を目的に、一部の事業者の実証実験に対して、現行法の適用を一時的に緩和すること
暗号通貨領域でのサンドボックス利用事例
では、暗号通貨・ブロックチェーンの領域で、
サンドボックスを利用しているプロジェクトがあるのかというと、
今年に入って認定を受けた企業が1社でてきました。
デジタルガレージ社の子会社・Crypto Garage社です。
同社は、2019年1月に金融分野で第一号となるサンドボックス制度の認定を受けました。
Crypto Garage、ブロックチェーンならびに金融分野第1号となる規制のサンドボックス制度の認定を取得
同社の発表をもとに、サービス内容をざっくり説明すると、
ブロックストリームのLiquidネットワーク上で、ビットコインの裏付けのあるトークンと交換可能な円建てトークンを発行することができる機能の提供
というものです。
これを日本の現行規制のもとでやろうとすると、おそらく交換業登録が必要になるのだと思われます。
なので、サンドボックスを利用することによって回避しているわけですね。
なお、同サービスがサンドボックス制度をどのように利用しているのか、内閣官房のウェブサイトからも計画の概要を確認することができます。
仮想通貨と法定通貨を同時決済可能なプロ向けの決済プラットフォームの構築(計画の概要)
サンドボックス制度の背景には、
社会実証を基にした政策形成の必要性を当局が認識しだしたことがあります。
2017年に世界に先駆けて暗号通貨に対する規制を明確化した日本ですが、
規制の方向性をめぐって、先行きが不安になりつつあります。
暗号通貨領域で世界に遅れを取らないために、
同制度を利用してプロジェクトを推進していく事例が増えれば良いなと期待しています。