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中国でマイニング禁止!?『産業構造調整促進指導目録』を読み解く

2019年4月8日、中国の国家発展改革委員会が、
『产业结构调整指导目录』と呼ばれる文書を公表しました。
(日本語では、『産業構造調整促進指導目録』といいます。以下、同目録と呼称)

(原文リンク)
http://gys.ndrc.gov.cn/cyjgtzzdml20190408.pdf

そのなかに、

中国国内での暗号通貨マイニングを将来的に禁止すべき

という内容の記載があり、暗号通貨界隈に衝撃が走っています。

そこで、当記事では、

  1. 中国国家発展改革委員会って誰?偉いの?
  2. 『産業構造調整促進指導目録』ってなに?
  3. 中国の業界関係者の反応は?
  4. ビットコイン価格はどうなる?

といった内容をまとめてみました。

(2019/11/6 追記)
2019年11月6日、中国の国家開発委員会はマイニングの廃止類への分類を取り消すことを発表しました。

下記はそのツイートです。

中国国家発展改革委員会とは?

今回の文書を公表した中国国家発展改革委員会とは一体どんな組織なのでしょうか?

JETROは同組織について、こう評価しています。

「中国の経済政策を決定する上で、最も重要な役割を果たしていると見られる中央官庁」
引用:『中国・国家発展改革委員会の権力構造』

これまで中国では、2017年の取引所営業禁止命令など、
中央銀行(PBoC)が暗号通貨関連の規制を先導してきた感があります。

マイニングを含めた暗号通貨関連事業が産業として一定の規模に達したことで、
今後は、あらたな規制当局として、国家発展改革委員会の動きにも注目する必要がありそうです。

『産業構造調整促進指導目録』とは?

暗号通貨のみならず、国内の産業構造全般を調整の対象としています。

端的に言うと、ある産業の今後について、
重点的に育成するのか
廃止の方向に向かうのか
国の産業育成の方向性を示すための文書です。

「経済増長方式を転換し、産業構造の調整と優性的なグレードアップを推進して国民経済安定の比較的速い発展の保持を重要な意義とする」
引用:JETRO『産業構造調整促進暫定施行規則 (和文仮訳)』

同目録では、国内産業のあり方について、

①鼓励类(奨励類)
②限制类(制限類)
③淘汰类(全廃類)

の3つに分類しています。

③淘汰类(全廃類)に分類されてしまった産業は、

  • 人間の体にとって悪影響がある
  • 環境破壊が深刻である
  • 資源やエネルギーを著しく浪費している

などの理由から、
今後、廃止することが求められます。

今回、マイニングが禁止される理由として考えられるのは、
3番目のエネルギーの無駄遣いが一番あてはまりそうです。

一説によると、中国内でマイニングに使用される電力量だけで
バングラデシュ国家全体の電力使用量に匹敵するそうです。

『産業構造調整促進指導目録』を読み解くポイント

◯マイニングを③淘汰类(全廃類)に分類
今回、同目録において、
「中国国内でのマイニング」が③淘汰类(全廃類)に分類されました。(原文120ページ)
この発表をうけて、「将来的に中国国内でのマイニング禁止か」と騒がれているわけです。

◯一方、ブロックチェーン技術自体については奨励する姿勢
中国は2017年1月の国内取引所の営業禁止を発表したころから、
一貫して、ブロックチェーン技術そのものは評価してきました。

今回もブロックチェーン技術自体は①鼓励类(奨励類)に分類しています(原文59ページ)
このことから、中央銀行が発行する、いわゆるデジタル通貨の研究を今後も続けていくものと推測できます。

◯同目録は、まだパブコメを募集する段階
・この版から決定稿に至る過程で、どの程度内容の変更があるものなのか?
・同目録による分類は、どれほど実効性を持つものなのか?
→過去の事例はどうなっている?

これについては、中国の政策決定における力学というか権力構造を理解できていないと、中国語だけできたとしても、結局ふわっとしたことしか分からないということが身にしみた次第です。
中国の業界関係者の見解を、下の項目でいくつか紹介しています。

◯マイニングの禁止はいつ?
・期限は明示されていない
マイニングをいつまでにやめなければならないのか、同目録には具体的な期日の記載はありません。

③淘汰类(全廃類)に分類された産業全般の廃止期限について、原文にはこう記されています。

注:条目后括号内年份为淘汰期限,淘汰期限为 2021 年 1月 1 日
是指应于 2021 年 1 月 1 日前淘汰,
引用:『产业结构调整指导目录』(2019 年本,征求意见稿)

意訳すると、こうなります。

各項目の後にある()に示された日付が廃止期限である。
たとえば、(2021年1月1日)という記載が項目の後にあれば、
2020年12月31日までに廃止しなければならないということである。

たとえば、化粧品の防腐剤についての項目については、
このように()の中に廃止期限が示されています。

一方で、マイニングの禁止については期限の記載がありません。

一部で、2021年までを期限とする、という報道がありますが、
公表された『产业结构调整指导目录』の原文を読む限り、マイニングの項目には期限に関する括弧書きはないため、やはり期日については不明とみるべきでしょう。

ただし、ここで一つ気になるポイントがあります。
それは③淘汰类(全廃類)に分類された項目のうち、
期限が明示されていない項目に適用される以下の原則です。

其余类推;有淘汰计划的条目,根据计划进行淘汰;未标淘汰期限或淘汰计划的条目
为国家产业政策已明令淘汰或立即淘汰。
引用:『产业结构调整指导目录』(2019 年本,征求意见稿)

和訳も載せておきます。

「全廃期限のない或いは全廃計画の条目は、国家産業政策ですでに全廃を明文で命令している或いは直ちに全廃するものである」
引用:JETRO『産業構造調整促進暫定施行規則 (和文仮訳)』

中国国内でのマイニング禁止って、
これまで「すでに全廃を明文で命令」されてましたっけ?
されてないですよね?
ということは、「直ちに全廃」される可能性もある・・・?

 

中国の業界関係者の見解

今回のマイニング廃止類への分類について、
中国の暗号通貨業界内の見解をピックアップしてみました。

Primitive Ventures社・Dovey Wan氏

暗号通貨を投資対象としたベンチャーキャピタル・Primitive Ventures社の創業者で、
Zcash・Kyber・0xなど、数多くの有望プロジェクトに早期から投資してきたことで知られているDovey Wan氏はTwitter上でこのような見方を示しました。

  • 同文書は3~5年に一度のペースで公表されている
  • 2006年までに廃止すべきと指定された項目が、2011年版と2019年版にもまた登場している
  • つまり、同文書で廃止類に分類されたからといって、必ずしも廃止の強制力があったわけではないということ

匿名の業界関係者

  • 地方政府が今回の文書の決定に従わず、マイナーを支援する抜け道的な方法をみつけられるようであれば、あるいは、一部のマイナーは今後も中国でマイニングを続けられるかもしれない

据业内人士表示,可能仍有一些比特币矿工会留下来,特别是如果地方政府不执行有关指示,并找到扶持当地生产商的方法的话。
引用:ニューヨーク・タイムズ中文版『纽约时报中文网

 

元BTCC副総裁・赵千捷氏

  • 廃止類への分類が、そのまま禁止を意味するわけではない
  • 一部のマイナーは、地方政府からの補助金や電気代の優遇なしでも事業を継続していけるかもしれない
  • その場合は、マイニングコストの上昇を受け入れることになる

定位为不支持不扩张的产业,并不是一个禁令,”中国首个加密货币交易所——比特币中国(BTCChina)的前高管赵千捷说。
相反,赵千捷说,一些生产商可能会学着在没有补贴或用电折扣这类福利的情况下生存。
所以改变就是挖矿成本会高
引用:ニューヨーク・タイムズ中文版『纽约时报中文网

 

マイニング事業者(伝聞)

中国のマイニング事業者への聞き取り結果として、このようなツイートをしている方もいました。

中国のインターネットデータセンター(iDC)は、確かにライセンス制です。
ただ、自分がネットを調べた限りでは、大手マイニング事業者がiDCを持っているというような記事は見つからず、情報確度がどの程度のものなのかは分かりません。

これらの見解は、あくまでも「過去においては廃止の強制力が及ばなかった項目もあった」ということの指摘にとどまります。

中国におけるマイニング規制を振り返ると、
2017年11月、四川省の地方政府がマイニング向け電力の供給にストップをかけたことがありました。

マイニングに対する中国政府の規制が、どこまで本気なのか、見極めるのはやはり難しいと言わざるを得ません。

 

中国でマイニング禁止ならビットコインの価格はどうなる?

実際に全面的に禁止となるかどうかは現時点ではわかりません。
もしも、中国でのマイニング禁止が現実となった場合、ビットコインの価格にはどのような影響を与えるのでしょうか?
短期と長期に分けて考えてみました。

◯短期で急落

  • 中国国内から提供されているハッシュパワーの分だけ下落?現状70%
  • マイナーはヘッジ売りをしてくると考えられ、それも価格下落要因に

◯長期で上昇

  • 中国の安価な電気代が使えない→相対的に電気代の高い他国でマイニングせざるを得ない→採掘原価上昇→価格上昇?
    (2019年3月までの下落局面でも、採掘原価ギリギリで下げ止まったので、採掘原価は底値を考える上で意識されているという説と整合性がある)
  • マイニングが中国一国に集中しているという悪いイメージが払拭されることで、新たな購買層が流入→価格上昇?

◯価格が上がるか不安要素

  • 中国マイナーに海外に出てマイニング事業を継続する体力があるかどうか
    (Bitmainの香港でのIPO失敗にみる、マイナーの体力低下)
  • これまでは電気代が安い場所=中国だっただけで、もしマイニングが禁止されれば、今後は電気代が2番目にやすい他の国にマイニングが集中することも十分ありうる。
    (結果として、マイニングが中央集権化された状況は改善されないまま)